「トレカを売った分は非課税だから申告しなくていい」と書いてあるページがたくさんあります。国税庁のページを一通り開いて確かめたところ、その根拠になる記述は見つかりませんでした。
非課税だと書いていないのではありません。トレカやフィギュアがどちらに入るのかを、国税庁が書いていないのです。だからここでも断定しません。書いてあることと、書いていないことを分けて出します。
私は税理士ではありません。ここは税務の助言をする場所ではありません。 やっているのは、国税庁のページを開いて書いてあることをそのまま並べ、書いていないことを「書いていない」と示すことだけです。 自分の場合どうなるかは、金額が大きいなら税務署か税理士に確かめてください。国税庁には電話相談窓口もあります。
それから申告を避ける方法は書きません。調べたのは「どういうときに課税対象になるのか」と「しなかったときに何が上乗せされるのか」です。
国税庁が実際に書いていること
まず、生活に使っていた物を売った分は課税されない、という定めがあります。ただし例として挙がっているのは「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服」で、例外として挙がっているのは「貴金属や宝石、書画、骨とう」で1個または1組30万円超のものだけです。
| 論点 | 国税庁のページに書いてあること | 出典 |
|---|---|---|
| 生活に必要な物を売った分は課税されるのか | 「家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得です。」 これが「所得税の課税されない譲渡所得」として挙げられているもの。 | タックスアンサー No.3105 |
| その例外 | 「ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで、1個または1組の価額が30万円を超えるものの譲渡による所得は除きます。」 30万円を超えると課税される、と書かれているのはこの4種類(貴金属・宝石・書画・骨とう)についてだけ。 | タックスアンサー No.3105 |
| フリマ・オークションで私物を売った場合 | 「生活の用に供している資産(古着や家財など)の売却による所得は非課税(この所得については確定申告が不要)で、損失は生じてないものとみなされます。」 例として挙がっているのは「古着や家財」「衣服・雑貨・家電」。 | タックスアンサー No.1906 |
| 繰り返し売った場合 | 「(1)から(4)までの資産以外の資産を相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合の所得は、事業所得または雑所得となります。」 回数や金額の基準は書かれていない。通達では「社会通念上事業と称するに至る程度」という書き方。 | タックスアンサー No.3105 |
| 課税される場合の計算と控除 | 「譲渡所得の金額 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)-50万円」 特別控除は短期と長期の合計で50万円まで。譲渡益が50万円より少ない場合は、譲渡益が特別控除額になる。 | タックスアンサー No.3152 |
| 5年で扱いが変わる | 「長期譲渡所得となるのは、所有期間が5年を超えている場合で、短期譲渡所得となるのは、所有期間が5年以内の場合です。」 短期は全額が総合課税の対象、長期はその2分の1が対象。 | タックスアンサー No.3152 |
| 会社員が申告しないといけない線 | 「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人」 この一覧の前に「確定申告をすれば税金が還付される人は除きます」と書かれている。非課税の所得はこの20万円に入らない。 | タックスアンサー No.1900 |
引用は国税庁のページの文言そのままです。要約すると意味が変わるので短くしていません。番号をクリックすると国税庁のページが開きます。
トレカとフィギュアは、どちらにも書かれていない
ここが本題です。タックスアンサー、質疑応答事例(譲渡所得の316件)、法令解釈通達、確定申告の特集ページを見ましたが、「トレーディングカード」「トレカ」「フィギュア」「収集品」「コレクション」という語は一度も出てきませんでした。
しかも所得税法9条1項9号(生活用動産の非課税)に対応する通達の項目そのものが存在しません。第8号関係の次が第10号関係で、第9号が飛ばされています。国税庁は「生活に通常必要な動産」の範囲を、通達のレベルでも具体化していないということです。
- トレカやフィギュアが「生活に通常必要な動産」に当たるかどうか。「トレーディングカード」「トレカ」「フィギュア」「収集品」「コレクション」という語は、タックスアンサー・質疑応答事例・法令解釈通達・確定申告の特集ページのどこにも出てこなかった。
- トレカやフィギュアが、30万円超で課税される「書画、骨とう」等に当たるかどうか。こちらも書かれていない。
- 「1個または1組の価額」をどう見るか。カード1枚ごとなのか、デッキやセット単位なのか、まとめ売りしたときはどうなるのか。判定の基準は書かれていない。
- 「相当の期間にわたり、継続的に譲渡している」の具体的な回数・金額・期間。数値の基準は示されておらず、通達も「社会通念上事業と称するに至る程度」という書き方にとどまる。
- そもそも所得税法9条1項9号(生活用動産の非課税)に対応する法令解釈通達の項目が存在しない。第8号関係の次が第10号関係で、第9号が飛ばされている。つまり国税庁は「生活に通常必要な動産」の範囲を通達のレベルでも具体化していない。
だからこのページでも「トレカは非課税です」とは書きません。断定しているページを見かけたら、その根拠が国税庁のどこに書いてあるのかを確かめてください。
それでも判断の目印になる数字はある
断定できないと言っても、手がかりが無いわけではありません。国税庁のページから確実に読み取れるのは次の4つです。
- 非課税に当たるなら、申告は不要。「この所得については確定申告が不要」と明記されています(No.1906)。非課税の所得は、会社員の20万円の計算にも入りません。
- 課税されるとしても、譲渡益から50万円が引かれます。短期と長期の合計で50万円までの特別控除です(No.3152)。譲渡益が50万円より少なければ、その金額までしか控除できない、とも書かれています。
- 持っていた期間が5年を超えると、対象が半分になります。長期譲渡所得はその2分の1が総合課税の対象です(No.3152)。昔から持っていたカードを売る場合に効きます。
- 繰り返し売ると、譲渡所得ではなくなります。「相当の期間にわたり、継続的に譲渡している場合」は事業所得または雑所得になると書かれています(No.3105)。ここには50万円の特別控除がありません。転売として続けるのと、手持ちを処分するのは、扱いが違うということです。
回数や金額の線は書かれていません。通達の書き方は「社会通念上事業と称するに至る程度」です。数値の基準を出しているページは、国税庁ではなく書いた人の解釈です。
「バレるか」ではなく、上乗せの話
この語で調べる人が気にしているのはここだと思うので、事実だけ書きます。隠す方法は書きません。書けるのは、申告しなかった場合に本来の税金に何が上乗せされるかです。
| どういう場合か | 上乗せされる割合 | 出典 |
|---|---|---|
| 調査の事前通知の前に、自分で期限後申告をした | 5% | No.2024 |
| 事前通知の後(調査による決定を予知する前)に期限後申告をした | 50万円まで10%/50万円超300万円まで15%/300万円超25% | No.2024 |
| 調査を受けた後に期限後申告をした | 50万円まで15%/50万円超300万円まで20%/300万円超30% | No.2024 |
| 過去5年内に無申告加算税か重加算税を課されたことがある | 上の割合に10%加算 | No.2024 |
| 延滞税(納期限の翌日から2か月まで) | 令和8年は年2.8% | No.9205 |
| 延滞税(2か月を経過した日以後) | 令和8年は年9.1% | No.9205 |
延滞税の割合は年ごとに変わります。上は令和8年の割合です。読んでいる時点の割合は出典のページで確かめてください。無申告加算税には、法定申告期限から1か月以内に自分で期限後申告をして一定の要件をすべて満たす場合はかからない、という定めもあります(No.2024)。
注目したいのは一番上の行です。調査の事前通知が来る前に自分で期限後申告をした場合は5%で、調査を受けた後だと15%から始まります。さらに、法定申告期限から1か月以内に自分で申告して一定の要件をすべて満たせば、無申告加算税はかからないという定めもあります(No.2024)。気づいた時点で早く動くほど軽い、という構造になっています。
延滞税は本税だけにかかり、加算税にはかからないとも書かれています(No.9205)。割合は年ごとに変わります。
売る前にやっておくと楽なこと
- 売った金額の記録を残す。買取なら明細、フリマなら取引画面です。課税されるかどうかを後で判断するには、まず金額が必要です。
- 買ったときの値段が分かるものは残しておく。課税される場合、譲渡益は「売った額 −(取得費 + 譲渡費用)」から計算します。取得費が分からないと不利になります。1枚ごとの明細を出す業者を選ぶのは、この意味でも効きます。
- 1点で高額なものは分けて考える。30万円という線が出てくるのは「貴金属・宝石・書画・骨とう」についてですが、1点が高額になるものは扱いを確かめたほうが安全です。うちが追いかけているカードの値段はカードの価格一覧で見られます(海外の販売相場を換算した参考値です)。
この記事で書いていないこと
- 「トレカは非課税です」とも「課税されます」とも書いていません。国税庁がどちらとも書いていないので、書けば私の解釈になります。
- 税額の計算例を作っていません。国税庁のページにある式と控除額だけを載せています。自分の数字を当てはめた結果は、税務署か税理士に確かめてください。
- 申告を避ける方法、税務署に知られない方法は書きません。
- 税務大学校の論文は出典に使っていません。nta.go.jp にある文書ですが、冒頭に「全て執筆者の個人的見解であり、税務大学校、国税庁あるいは国税不服審判所等の公式見解を示すものではありません」と明記されているためです。
- 各ページは2026年8月9日に開いて確認したものです。タックスアンサーは法令改正で書き換わり、延滞税の割合は毎年変わります。番号のリンクから原文を確かめてください。
